生理のトラブルといえば、生理痛と重い生理が最もよく聞くトラブルですね。私は、痛いと思うほどの痛みを感じたことはありませんでしたが、おなかと腰の周りが冷えて、だるくなり、渋り腹のような感じになったり、便が柔らかくなったりする経験もしました。
私の最大のトラブルは重い生理でした。私は大学の2年生の頃から生理が重くなって、最初の二日間は頻繁にパッドやタンポンを取り換えなくてはならず、夜も熟睡してしまうと取り換えのタイミングが遅れて漏れてしまうのが怖く、気を緩めることができない状態でした。今なら大人用のおむつを使うことができますが、当時はそういうものはまだありませんでした。でも、月に2日間我慢すれば済むことなので、だれにも相談したことはありませんでした。
貧血になって、お風呂上がりに突然目の前が真っ暗になって倒れたこともありました。その頃、ちょうど胃潰瘍にもなっていたので、貧血は胃潰瘍の出血のせいということになって、鉄分を補給する薬をもらい貧血は改善しましたが、重い生理はずっと続きました。妊娠・出産するとホルモン・バランスが改善するかもしれないという話も聞いたことがありましたが、改善することはありませんでした。立ち眩みしたり、突然倒れたりすることはありませんでしたが、いつも疲れが抜けず、何をするにも自分を叱咤激励してガンバっていたように思います。
40代の半ばで子宮筋腫が大きくなり、子宮の全摘出手術を受け、生理からは解放されましたが、今度は更年期障害と戦うことになりました。それについては別の機会にお話ししたいと思います。
さて、生理のトラブルの原因ですが、通常の生理痛や重い生理はプロゲステロンを補充することによって改善することから考えて、プロゲステロン不足によるホルモン・バランスの崩れが原因と考えて間違いなさそうです。
プロゲステロン・クリームについて知ってから間もなく、ホームページに学んだことを書き始めたのですが、私のホームページを見たと言って自分の経験を書いたメールを送ってくれた40代人がいました。重い生理に苦しんだあげく、医者の勧めに従って子宮摘出の手術を考えていた時、プロゲステロン・クリームを発見し、試してみたところ、重い生理が治ったから、プロゲステロン・クリームは本当に役に立つという内容でした。
プロゲステロン不足の原因はというと、通常はストレスです。特によく知られているのは、過度のダイエットによる摂取カロリーの不足が黄体機能不全つまりプロゲステロン不足の決定的な原因となるということです。激しいトレーニングとダイエットが重なる運動、マラソン、体操、バレーなどで頻繁に見られることはよく知られています。黄体機能不全どころか、生理が止まってしまう場合も珍しくないということです。精神的なストレスも無関係ではありません。人生の大きな節目、進学、引っ越し、結婚、出産、病気、離婚、死別、等々の時に大きなストレスにさらされて、生理に変調をきたす場合も少なくないようです。
次の図は、栄養状態がいかにプロゲステロンの分泌を左右するかを示したものです。ポーランドやアメリカの都市ボストンではプロゲステロンのレベルが高くなっていますが、食糧事情の悪いアフリカのザイヤやヒマラヤの山岳地帯にあるネパールでは低くなっているのが示されています。
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| 出典: Menstrual Disturbances in Athletes: A Focus on Luteal Phase Defects, by MARY JANE DE SOUZA, 2003 |
女性の月経周期では、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの役割に焦点が当てられますが、生理では、プロスタグランデンという物質が重要な役割を演じます。下の図は2種類のプロスタグランデン、F2アルファ(PGF2α)とE2(PGE2) の月経周期による変動を示しています。実線で示されているPGF2αは排卵後の黄体期の中頃までに高レベルに上昇し、破線で示されているPGE2は生理直前に上昇しています。そのあとPGF2αもPFE2も急激に低下して生理が終わります。
出典:Levels of prostaglandins in human endometrium during the normal menstrual cycle, by J. Downie et. al. J Physiol. 1974 |
それでは、プロゲステロン不足がなぜ生理のトラブルの原因になるのでしょうか。
プロゲステロンの子宮に対する作用
- 子宮筋をリラックスさせる、つまり収縮が強くならないようにする。これはプロゲステロン受容体によって仲介される。平滑筋の収縮には生化学レベルではカルシウムの流入とミオシンのリン酸化が関与しているということですが、プロゲステロンは細胞レベルでマグネシウムの流入を増加することによってカルシウムの流入を抑制し、さらに収縮に関係するタンパク質も抑制する。
- プロスタグランデン生成の抑制
プロゲステロンはプロスタグランデンの生成に必要な酵素であるcyclooxygenase-2 (COX-2)の生成を抑制する。同じようにCOX-2の生成を抑制するNonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs)と呼ばれる痛み止めも生理痛によく効くと言われています。重い生理の場合、NSAIDsによって出血が30%程度減少するという研究もあります。(NSAIDs for heavy menstrual bleeding, 2021.を参照)
プロスタグランデンはF2アルファ(PGF2α)とE2(PGE2)以外にも色々ありますが、その機能は細胞に発現する受容体に依存します。まだ完全には理解されていないようですが、子宮以外の組織でも、発熱、炎症、痛み、組織の分解などに関係していることが知られているようです。生理との関係では、子宮とその血管の収縮から内膜の剥離という一連の現象にはプロスタグランデンが関係していると考えられるわけです。
排卵から7日でプロゲステロンが低下し始め、生理の2日前にはピーク時の三分の一ほどになると同時にプロスタグランデンが急速に上昇します。それによって子宮組織の収縮が強くなり、子宮内の血管が圧迫されて内膜への血流が低下し、内膜の組織が維持できなくなり、内膜がはがれ落ちるということのようです。
お腹の周りや腰が冷えたり、だるくなったりするのは、生理(内膜の壊死)を引き起こすために組織が収縮し血流が低下するせいだということで納得できます。渋り腹のような感じや便が柔らかくなるのはプロスタグランデンの影響が腸にも及び、平滑筋である腸の収縮を活発にし、さらには血流が圧迫されるからということなのでしょう。
生理の直前から気持ちが悪くなったり、気分がむしゃくしゃしたりするという、いわゆる月経前症候群といわれる人もいるようですが、これはプロスタグランデンが血流に乗って体内をめぐり、脳など体の他の部位に影響するためと考えられているようです。
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