骨粗鬆症は健康に対する重大な脅威です。一般に老化に伴って骨がもろくなり折れやすくなります。International Osteoporosis Foundation's Facts and statistics about osteoporosis and its impact によると、50才以上の女性の3人に1人が、男性の5人に1人が、骨粗鬆症が原因の骨折を経験するということです。現在の一般的な医療アドバイスやガイドライン、たとえば「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版」では、(1) 女性ホルモン、特にエストロゲンを補充すれば骨量の急激な低下を抑制して骨粗鬆症を防止できる、(2) ただし、ホルモン補充には危険な副作用があるので、癌や血栓などのリスクが高い人は、(3) 代わりにビスホスホネート系薬剤やEstrogen Receptor Modulator(選択的エストロゲン受容体モデュレーター)なる疑似エストロゲンを使えば骨を温存し強化できることになっています。
(2) が前提としている、癌リスクや血栓リスクが高い人にはホルモン補充は危険すぎるというのは、間違ったホルモン補充を行った場合のことで、エストロゲン単独または疑似合成プロゲステロンとの組み合わせという間違ったホルモン補充を、治験も経ずに標準ホルモン療法として使用してきたという不幸な歴史を少しも反省することなく引き出した結論であり、安全なホルモン補充は既に確立していることを無視したものであることは、「安全なホルモン補充: 確かな証拠」で説明したとおりです。超低量のエストラジオールと本物(天然)のプロゲステロンを低量かつ経皮で使用する正しいホルモン療法を製薬会社が奨励し製品化していれば、ホルモン療法の危険性に関する配慮は全く異なったものになっていたはずであり、(3) の危険な薬剤には出番はなかったはずなのです。
ビスホスホネート系薬剤は実は骨を弱くすることが知られているにも関わらず、依然として幅広く処方されているので、ここでは、(1)のホルモンと骨の関係を調べる前に、まずビスホスホネート系の薬がいかに百害あって一利なしの有害で無用の長物であるかについて見ていきます。
骨を弱くする嘘つきビスホスホネート系薬剤
ホルモン療法に関係する製品で頻繁に見られることですが、ここでも製薬会社は半分うその情報で医者と消費者を説得することに成功しているようです。これは、故ドクター・ジョン・リーが1996に出版した『医者も知らないホルモン・バランス』(今村 光一 訳) で既に指摘していたことですが、ビスホスホネート系薬剤は実際には骨をもろくするのです。既にビスホスホネート系薬剤を使用している方やその使用を検討している方は「bisphosphonate-associated osteonecrosis (ビスホスホネートに関連した骨懐死)」を読む必要があります。ビスホスホネート系薬剤一覧表でどれがビスホスホネート系薬剤かを確認できます。
- ビスホスホネート系薬剤が原因で発生するあご骨の骨壊死は歯科医の間で広く知られている副作用であり、損傷は2.5年間の連続使用で明らかになります。ビスホスホネート系薬剤を使用している場合、歯科医は骨に無理が掛かる処置を避けます。
- Bisphosphonate-induced osteonecrosis of the jaws: Prospective study of 80 patients with multiple myeloma and other malignancies., Thacharot Boonyapakorn, Ingrid Schirmer, Peter A Reichart, Isrid Sturm, Gero Massenkeil 2008.
- Managing the care of patients with bisphosphonate-associated osteonecrosis: an American Academy of Oral Medicine position paper. Cesar A Migliorati, et. Al. 2005.
- 4 ~ 5 年間連続して使用すると、最初のうちは骨量増加によって強くなったように見えた骨が弱くなり折れやすくなります。
- 骨折リスクが高くなります (Association of low-energy femoral fractures with prolonged bisphosphonate use: a case control study., B Lenart, A Neviaser, S Lyman, C Chang, F Edobor-Osula, B Steele, M van der Meulen, D Lorich, J Lane, 2008).
- 骨の微細損傷が直らずに蓄積していきます (Suppressed bone turnover by bisphosphonates increases microdamage accumulation and reduces some biomechanical properties in dog rib. T Mashiba, T Hirano, C H Turner, M R Forwood, C C Johnston, D B Burr 2000)
- 骨の力学的特性に異常が見られるようになります (Bone micromechanical properties are compromised during long-term alendronate therapy independently of mineralization. Y Bala, B Depalle, D Farlay, T Douillard, S Meille, H Follet, R Chapurlat, J Chevalier, G Boivin 2011; 骨質についてのセクションも参照)
- 骨折した場合、ビスホスホネート系薬剤を使用していると、吸収されて新しく形成される骨の量が減るため、大きな割れ目が治りにくくなります (Bisphosphonate treatment delays stress fracture remodeling in the rat ulna., L J Kidd, N R Cowling, A C K Wu, W L Kelly, M R Forwood, 2011).
このようなデータを見れば、ビスホスホネート系薬剤は百害あって一利なしという結論になります。
ホルモン療法を避けてビスホスホネート系薬剤を使用するという選択は、本当は危険でない効果的な治療(百歩譲って、リスクがあるかもしれない治療)を確実に健康を害することがわかっている治療で置き換えるという選択です。ホルモン療法のもたらすリスク(副作用)は間違ったホルモン療法を使用した結果であり、正しいホルモン療法にはそのようなリスクはないことは、「安全なホルモン補充: 確かな証拠」で見たとおりです。
さらに重要なことは、更年期に骨吸収が加速するという問題の解決には、骨吸収速度を適切に保つという点でエストロゲンはビスホスホネート系薬剤より優れているのです (Microdamage accumulation in the monkey vertebra does not occur when bone turnover is suppressed by 50% or less with estrogen or raloxifene.Jiliang Li, Masahiko Sato, Chris Jerome, Charles H Turner, Zaifeng Fan, David B Burr 2005)。エストロゲンと天然プロゲステロンを使った正しいホルモン療法は、後で説明する骨質の維持という点から見ても、安全性という点から見ても優れているのです。第一、人体同一のエストロゲンとプロゲステロンは私たちの体に必要なものですが、ビスホスホネート系薬剤は私たちの体には異物でしかありません。連続して使わなければいいといような問題ではないと思います。
骨シリーズ
- 骨の健康:更年期に何が起きるのか
- 骨を弱くする嘘つきビスホスホネート系薬剤<<現在のページ
- エストロゲン・パラドックス
- 骨の維持とプロゲステロンの役割
- ストレスホルモンが骨を破壊する
- 更年期のエストロゲン補充が骨に役立つ理由
- お粗末な天然プロゲステロン研究の現状
- 骨質も骨量と同じだけ重要
- 骨の健康を維持するための基本
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