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2014/11/25

骨の維持とプロゲステロンの役割

プロゲステロン=黄体ホルモンの骨生成促進作用は実験室での研究では古くから知られていたことです。
さらに、黄体のプロゲステロン分泌能力の衰退は40才前後から本格的に始まり、エストロゲンの低下よりかなり前です。そのタイミングは骨量の低下が始まる時期に一致しています。
下の図. 2 は、閉経直前の数年間に見られる月経周期とその乱れを示しています。3回に1回は、エストロゲン(E1G)だけが上昇してプロゲステロン(PDG)が分泌されない周期になっています。

2. PDG = 尿内のプロゲステロン代謝物、E1G = 尿内のエストロゲン代謝物。太い黒線は月経のあった日。Skipped = 生理が来なかった、Normal = 正常の月経周期。出典:Progesterone and ovulation across stages of the transition to menopause.Kathleen O'Connor, Rebecca Ferrell, Eleanor Brindle, Benjamin Trumble, Jane Shofer, Darryl Holman, Maxine Weinstein 2009
プロゲステロンの低下が骨に与える影響
骨代謝の測定と月経周期内のホルモンの上がり下がりを測定した研究を見ると、プロゲステロンの骨生成の役割が明確に示されています (Progesterone and bone: a closer link than previously realized. V Seifert-Klauss, M Schmidmayr, E Hobmaier, T Wimmer 2012)
月経周期は排卵の前(卵胞期)と後(黄体期)の2期に分けることができます(生理期間を別にすると3期になります)。エストロゲンは排卵前と後の両期に分泌されるのに対し、プロゲステロンは黄体期にしか分泌されません。エストロゲンとプロゲステロンの分泌の有り無しの可能な組み合わせは2×24通りあります。黄体期だけを見ると、下の表のように、それぞれの組み合わせは、14の条件下で起きます。12が閉経前の正常な月経周期と排卵障害のある月経周期の違いを示します。
黄体期
プロゲステロン有り
プロゲステロン無し
エストロゲン有り
1. 正常の月経周期
2. 排卵障害 (排卵なし、あってもプロゲステロンの分泌が弱く長続きしない)
低いエストロゲン
3. 自然にはありえない組み合わせ。プロゲステロンのみを大量に補充したとき。
4. 生理が来なかったとき、止まったとき(卵巣摘出後や閉経後も含む)

閉経直前の数年間の月経周期を調べると、42% の月経周期で排卵が見られず、骨形成マーカーのBAPは排卵があった月経周期に増加し、排卵がなかった(プロゲステロン分泌がなかった)月経周期では増加しません。一方、骨吸収マーカーのピリディノリン(pyridinoline)は、排卵がありプロゲステロンが高くなった月経周期で低下するのに対し、排卵のなかったエストロゲンのみの月経周期ではあまり低下しないと報告されています。つまり、プロゲステロンは骨形成を促進し、かつ、骨吸収を抑制するということになります(直接か間接かはわかりませんが)。骨量の維持という観点から見ると、骨量を維持した女性では、正常の月経周期がより多く維持されていました。2年間の研究期間に骨量が低下した女性のデータの分析では、骨量減少との相関関係で、その42%を説明する要因として、生理の停止した回数、骨吸収マーカー、およびコーチゾルレベルが浮かび上がっています。若い女性を調べた研究 (人数 = 458、平均年齢 = 31) では、正常の排卵が年率 0.5% の骨量増加に結びついているのに対し、排卵障害は年率 0.7% の骨量低下に結びついていると報告されています (Progesterone and Bone: Actions Promoting Bone Health in Women. by Vanadin Seifert-Klauss, Jerilynn C Prior 2010: meta-analysis and review)
これらの研究で報告されているホルモンのパターンは、エストロゲンが維持されプロゲステロンが低下する、エストロゲン優位と呼ばれる現象ですが、このホルモンパターンは骨量低下ばかりでなく、さまざまの健康リスクに結びついていることは以前から指摘されていたことです。この健康リスクを避けるには、天然プロゲステロンの補充が有効であることも指摘されてきましたが、今のところ、閉経前の女性でそれを検証しようとした臨床実験は皆無です。
ストレスホルモン(コーチゾル、薬は通称ステロイド)の作用について理解しておくことも重要です。その骨を破壊する作用については次のページで詳しく見ていきますが、高レベルのストレスホルモンはプロゲステロンの分泌を長期間にわたって低下させることが観察されています。
つまり、高レベルのストレスホルモンは、プロゲステロンの分泌を長期間にわたって低下させることによってその破壊的作用を増幅するのです。プロゲステロンがゼロに近くなる閉経後のホルモンパターンがどれだけ健康リスクを増加させるかは想像するだけで背筋が寒くなりますが、今のところ、実際にどれだけ天然プロゲステロンの補充が健康リスクを回避するのに役立つかについてのデータは、正しいプロゲステロン補充とは言いがたい過剰投与を使った研究しかありません。その場合の健康リスクは、ホルモン補充を使用していない場合と同じ程度という結果です(詳しくは、「安全なホルモン補充: 確かな証拠」を参照)。
骨シリーズ
  1. 骨の健康:更年期に何が起きるのか
  2. 骨を弱くする嘘つきビスホスホネート系薬剤
  3. エストロゲン・パラドックス
  4. 骨の維持とプロゲステロンの役割  <<現在のページ
  5. ストレスホルモンが骨を破壊する
  6. 更年期のエストロゲン補充が骨に役立つ理由
  7. お粗末な天然プロゲステロン研究の現状
  8. 骨質も骨量と同じだけ重要
  9. 骨の健康を維持するための基本
 

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