ページ

2020/04/10

ウイルス肺炎のサイトカイン・ストームは天然黄体ホルモンで抑える

今世界中で流行っているウイルス肺炎で死んだ人の統計を見ると、死亡率は世界中どこを見ても男性が女性のほぼ2倍になっている(下図参照、なぜかアメリカのデータが入っていないが傾向は同じ)。日本も例外ではない。菅官房長官が死者の7割強が男性と発表したと、4月9日付けで朝日デジタルが書いている。これには多くの人が気が付いていて、ワシントンポストには、All across the United States, the coronavirus is killing more men than women, data show(アメリカ中でコロナウイルスは女性より男性を多く殺しているとデータが示している)、 ニューヨークタイムズにはWhy Are So Many More Men Dying from Coronavirus?(なぜ女性に比べてコロナウイルスで死ぬ男性がとんでもなく多いのか)や、Why the Coronavirus Seems to Hit Men Harder Than Women(なぜコロナウィルは女性より男性に大きな被害を出しているのか)という記事が載っていた。

Infographic: More Men Dying to COVID-19 Than Women | Statista
https://www.statista.com/chart/21345/coronavirus-deaths-by-gender/

性差があるということは性ホルモンが関係している可能性があることを示唆している。ウイルス性肺炎では、炎症が突然悪化して死亡する、サイトカイン・ストームという現象があるので恐ろしいと聞いていた。それで、サイトカイン・ストーム(cytokine storm) と女性ホルモンの一つで抗炎症作用があることで知られる黄体ホルモン(progesterone)で検索すると、一つズバリヒットした研究が見つかった。2016年にジョンズホプキンス大学で行われた研究、Progesterone-Based Therapy Protects Against Influenza by Promoting Lung Repair and Recovery in Females. (Olivia J Hall, et al) [黄体ホルモンに基づいた治療が、肺の修復と回復を促進して女性をインフルエンザから守る]である。

さらに調べると、ジョンズホプキンス大学の 同じグループの研究に、17β-estradiol Protects Females Against Influenza by Recruiting Neutrophils and Increasing Virus-Specific CD8 T Cell Responses in the Lungs (D.P. Robinson et al. 2014)[17βエストラダイオルが、肺の中で好中球を集めウイルス特異的なCD8 T細胞反応を高めることによって女性をインフルエンザから保護する]があった。この実験ではエストラダイオル自体ではなくその受容体の役割を見ている。

Sex-based differences in susceptibility to SARS-CoV infection(
R. Channappanavar, et al. 2017)[SARS-CoV感染症における性差]というアイオワ大学のグループによる研究もある。この研究ではエストロゲン受容体の存在が死亡率を左右する重要な役割を担っているという結論を出している。

若くて健康な女性、つまり、黄体ホルモンもエストラダイオルも十分分泌されている人なら、ウイルス性肺炎に罹っても、死を免れる確率が高いということなのだ。言い方を変えれば、年を取って、更年期も通り越し、ホルモンが低くなっている女性は男性同様に死亡率が高くなるということになる。残念ながら、年齢別、男女別のグラフはよく見るが、年齢ごとの男女差を示したグラフは見たことがない。しかし、女性ホルモンが関係しているなら、年齢が高くなると男女差が少なくなるだろうということは容易に想像がつく。

しかし、年を取っていても、悲観することはない。ホルモン補充という手があるのだ。このブログで紹介してきたホルモンバランスを考慮したホルモン補充を継続していれば、2019年発現のウィルスも含めて、ウィルス性肺炎を余裕をもって乗り切ることができるかもしれないと希望を持たせてくれる。

感染しないに越したことはないのは言うまでもないが、男性でも、黄体ホルモンを補充すれば症状が軽くて済むかもしれない。誰か試してみませんか。人体同一の黄体ホルモンはアメリカではnatural progesterone creamなどの形で、処方箋なしで買える。日本からも個人輸入で買える。日本でも筋肉注射ならどこの病院にもある薬だ。黄体ホルモン・アナログなどと呼ばれている黄体ホルモンもどきは副作用があるだけでなく、代謝過程も作用も異なるので避けた方がいい。研究者の中には黄体ホルモンもどきでできている避妊薬やホルモン補充用の薬でも効くというような論を検証せずに展開している人がいるので注意が必要だ。

男性でも男性ホルモンが低くなると更年期に入る。その対策に黄体ホルモンとDHEAを補充するという人が少なからず存在する。男性の脳外傷の救急患者を黄体ホルモンで安定させる(脳の浮腫を抑制する)治療方法も研究されてきた (ProTECT: A Randomized Clinical Trial of Progesterone for Acute Traumatic Brain Injury. David W. Wright et al., Ann Emerg Med. 2007)。つまり、男性の黄体ホルモン補充は未踏の分野ではない。実は男性の体内でも量は少ないが黄体ホルモンは分泌されている。

一方、若い女性でも安心はできない。ストレス下で最初に低下する機能は黄体ホルモン分泌機能である。したがって、ストレスにさらされながら頑張っている女子の皆さん、生理が不順な人、生理が重い人、どこも悪い所がないのに妊娠できない人などは、念のために黄体ホルモンを補充するといいかもしれない。ありがたいことに、黄体ホルモンはエストロゲン受容体を増やす役割もあり、鎮静剤としての作用も強い。

マラリアの薬として開発されたハイドロキシクロロキンを抗炎症薬としてコロナ肺炎に使ってみたらとアメリカのトランプ大統領が言い出して、今、この薬が入手しにくくなっているそうだが、黄体ホルモンの使用を提案する人がいないのはなぜか。これは憶測にすぎないが、製薬会社が後ろにいるに違いない。

黄体ホルモンに話を戻すと、黄体ホルモン・アナログ(黄体ホルモンもどき)を製造してきた大手製薬会社は、人体同一のつまり本物の黄体ホルモン(progesterone)の使用が一般的になるのを防ぐためにあらゆる妨害工作を行ってきた歴史がある。皮肉なことに、黄体ホルモンもどきの一つ、メドロキシプロゲステロンアセテートは、それを使って全米の更年期の女性を対象とした臨床実験を実施することに成功したのが運の尽きで、その実験は副作用が無視できないレベルになって中止されてしまった。さらに、製造元のワイス社は、その黄体ホルモンもどきを、副作用を隠して販売してきたと訴えられて、裁判で巨額の損害賠償金を支払うよう命じられ、実質倒産した。

追記:アメリカでは、ようやくエストラダイオルとプロゲステロンを今はやりのウイルス感染患者(男性)に試してみようという病院と医者が出てきた。この情報の出どころは4月27日付けのNYTらしいがここ数日の間にCNNも含めてアメリカ中のメディアで言及されているから日本にも届いているかもしれない。それにしてもなぜタイトルにプロゲステロンを入れないのか不思議。

  • エストラダイオル張り薬を使った実験、55歳以上の男女110人:Renaissance School of Medicine at Stony Brook University on Long Island
プロゲステロン注射を使った実験、男20人、コントロール20人:Cedars-Sinai Medical Center in Los Angeles

要注意:これからホルモン補充を試してみようと考えている方は過剰投与にならないように気を付ける必要があります。過剰投与になると逆効果になる可能性があるからです。これについてはホルモンレベル:過剰と過少の見分け方を参考にしてください。さらに、エストラダイオルの張り薬はエストロゲンの補充には最も安全だと考えられていますが、それでも、プロゲステロンのサポートなしで使用すると、血液の粘性が増して血栓の危険性が高くなるだけでなく、心血管や腸管など平滑筋の痙攣の危険性も高くなることが知られています。ホルモン補充の安全性については安全なホルモン補充:確かな証拠を参考にしてください。

追記:トランプ大統領はハイドロキシクロロキンを製造しているSanofiを含む投資信託に投資していると4月6日付で報道されていた。大統領が「だめで元々」などと言いながら薬の宣伝をするというでたらめがまかり通る社会がトランプ政権下のアメリカなのだ。さらに、トランプ大統領は殺菌剤や紫外線がウイルスを殺すことができるので、体内に注入したり、照射したりすることが考えられるなどと言ったのを受けて、ライソールという殺菌剤の製造会社が急遽、殺菌剤は毒だから飲んではいけませんという声明を出したというとんでもない話。FDAは4月24日付けでクロロキンもハイドロキシクロロキンも不整脈などの心疾患を誘発するから治験でもその使用には注意が必要という警告を出した。

YouTube動画も作りましたので、そちらも併せてごらんください。